日本を描いたゲームだからこそ“英語”にもレプリゼンテーションが反映
今回のゲームの舞台は、中世の日本に基づいた「あづまの国」となっています。日本を舞台にしているということで、英語版の声優陣にも日本にちなんだキャストが起用するという、レプリゼンテーションが反映されています。こうした点については、ベルさんのなかでどのように捉えていますか?
日本人の1人の表現者としてシンプルに嬉しいです。今までだったらそういうキャラクターがいても、チャンスすら回ってこなかったのではないかな?と思うのですが、自分に似た顔のキャラクター、国籍のキャラクターを自分が演じられるチャンスが回ってきたというのが、すごく嬉しかったです。このゲームは映像でも日本の美しさがたっぷり詰め込まれているんですが、言葉の面もそうで、英語版でも、日本語の言葉がいっぱい入っているんですね。それから、春夏秋冬の四季にちなんだ名前がつけられた場所もあって。日本の美しさが詰まっているから、それをちゃんと日本で生まれ育ったこの魂を通して伝えられるっていうのが、やっぱりすごく嬉しいなって思いましたね。
日本語の言葉が登場するということですが、その日本語をセリフとして話すときは、ネイティブの日本語話者としての日本語になっているのですか? それとも、ネイティブの英語話者の方が話すような日本語になっているのでしょうか?
そこも面白くて、完全に日本人が話す日本語なんです! ゲームには「獣」とか「刀」、「和傘」、「ありがとう」とか、いろんな日本語が出てくるんですけど、その直前までは英語を喋っていても、「ありがとう」は日本語発音に切り替えるんです。そこも大変だった部分で、最初は切り替えるのがすごく大変でした。どうしても、「kemono」みたいに、英語発音になってしまうんですよ。氏繁さんというキャラクターを呼ぶときも、「Ujishige-San」じゃなくて、「氏繁さん」っていう日本語の発音にする必要があって、例えば、「Please save, 氏繁さん」みたいな。その部分だけ、グッと日本語に切り替えるんです。そういう部分への制作陣のこだわりが強くて、日本語の言葉はしっかり日本語として言ってほしいっていう。そこは楽しかった部分でもありますね。
ネイティブの英語話者の方が聞いて、ネイティブの日本語話者の「日本語」だとハッキリ分かるような発音ということですよね。例えば日本で聞く英語で言ったら、カタカナっぽい「サンキュー」ではなく、「Thank you」みたいな。
そうです! ハリウッド映画で言うと、過去の作品には日本人役が出てきても、日本語発音っぽくない日本語を喋っているみたいなことがあったと思うんです。これはディレクターもおっしゃっていたことなんですけど、日本の言葉はそのまま美しく日本語として伝えたいっていう。そこもすごくこだわっていたポイントです。
それから、とにかく日本の世界観が本当に美しく反映されていて。春霞の古道という場所があって、そこに綺麗な桜の木があるんです。その桜の木というのは、なつめにとってお父さんとの思い出が詰まった木で、「一緒に素材の採集に行ったあとに立ち寄って、一緒に眺めていた木だから、私の思い出が詰まっている木なの」みたいなことを言うシーンがあって。桜が咲くのは日本では卒業や入学のシーズンということもあって、日本の人って誰しもが桜に思い入れがあると思うんです。もちろん、私にとっても桜にはいろんな思い出があって。そういう思いを持ちながら、「桜」っていう言葉を喋るからこそ、なつめのそういう思いが伝わるんじゃないかなって思います。なのでそういう意味でも、そういう日本らしいものに対して自分も思い入れを持って喋ることができるので、今回のようなキャスティングにしてもらえて良かったなと思いますね。
ベルが声を担当している、ゲーム内でのなつめの映像。
英語版でプレーしている海外のプレーヤーからの、セリフに対するリアクションというのは、ベルさんのところにも届いていますか?
最近もいろんなメッセージが届くのですが、「なつめの『ありがとう』が可愛い」っていうことを伝えてくれますね。「『ありがとう』が本当にキュートだね」みたいな。“ありがとう”は普段からとても大切にしている言葉ですし、自分の日本人らしさが武器になった瞬間のような感じがして、すごく嬉しかったです。