『ジュラシック・ワールド』超え。『オデュッセイア』がユニバーサル1位


クリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』が、全世界興行収入16.8億ドル(約2,722億円)を突破した。『ジュラシック・ワールド』を上回り、ユニバーサル・ピクチャーズ作品の歴代最高記録を塗り替えたことになる。9月11日に公開された日本でも、初週末の興行収入ランキングで1位を獲得した。(フロントロウ編集部)
3日間で4億5,171万円、そのうち4割超がIMAX
日本での数字は、公開初日の9月11日から13日までの3日間で動員24万775人、興行収入4億5,171万780円。9月4日から始まっていた先行上映を合わせた累計では、動員32万9,268人、興行収入6億5,038万1,140円に達している。
注目すべきは内訳のほうだ。週末3日間のうちIMAXが占めた比率は、動員で34.5%、興行収入では43.2%。上映館数でいえばごく一部でしかないフォーマットが、売上のほぼ半分を持っていったことになる。都内のIMAX上映館では満席の回が続出した。本作は長編映画として史上初めて全編をIMAXフィルムカメラで撮影しており、その一点のために観客が特定の劇場へ集中したかたちだ。Dolby Cinema、4DX、MX4Dといったラージフォーマットにも客足が伸びている。
客層は映画ファンを中心に20代から60代までと幅広く、カップルや夫婦、友人同士での来場が目立つ。上映終了後に自然と拍手が起こる回もあるという。
「なんて面白いことをやるんだ、ノーラン監督は!」
この熱狂に合わせて公開されたのが、本作の字幕・吹替監修を務めた古代ギリシャ研究家・藤村シシンによる特別解説動画だ。まずは前編が公開された。
動画のなかで藤村は「なんて面白いことをやるんだ、ノーラン監督は!」「物語の原点に来てくれましたね!お待ちしておりました!」と、終始うれしそうに作品を語っている。
藤村が着目するのは、2800年前に生まれた原典そのものが、すでに「回想」や時間の切り貼りといった時間操作を備え、リアリティラインもあえて曖昧にしていたという点だ。時間をめぐる構造を繰り返し作品に持ち込んできたノーランと、古代の叙事詩とのシンクロ。そこに本作の必然があるという見立てである。
解説は、映画冒頭に一瞬だけ映し出されるテロップからすでに始まる。『トロイ』や「スターウォーズ」シリーズでもおなじみの冒頭テロップは、「この映画はどのように作られたか」の意思表明として古代ギリシャ文学でも用いられてきた手法なのだという。劇中で神々を雷や荒れ狂う海といった巨大な自然現象として描く演出についても、古代におけるリアルな感覚であり、日本の八百万の神にも通じると分析する。字幕監修の現場では、「信じる」という言葉に「信仰ではなく、自分以外の存在への信頼」という意図を込めたという裏話も明かされた。
地図は、最後まで出てこない
前編でもっとも印象的なのは、航海図をめぐるくだりだ。
原典『オデュッセイア』では、オデュッセウスが渡った島々の位置関係がはっきりしている。ところが映画は、その地図を観客に示さない。雪が舞う北国の風景などを重ねることで、いま自分がどこにいるのかわからないという主人公の絶望を、観客自身に体感させる。藤村はこれを「見事な英断!」と評した。
物語の全体像を握っているはずの監修者が、あえて情報を出さない選択を絶賛している——という構図が、この作品のつくりをよく表している。鑑賞後に観れば「あのシーンにはそんな意味があったのか」と腑に落ち、2度目の劇場へ向かいたくなるはずだ。後編は後日、公式サイトで案内される。
『オデュッセイア』はマット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン、ゼンデイヤらが出演。上映時間172分。2D(字幕/吹替)、IMAX、Dolby Cinema、4DX、MX4D、35mmの全6種9バージョンで大ヒット上映中で、日本語吹替版も用意されている。
9月14日、大阪では「なにわのアン・ハサウェイ」が登場
公開後初の週末が明けた9月14日、大阪ステーションシティシネマで大ヒット記念舞台挨拶が行なわれた。大阪スペシャルサポーターとして登壇したのは、関西を代表する夫婦漫才師のかつみ・さゆりと、シンガーソングライターの嘉門タツオ。
本作が吟遊詩人ホメロスの歌による物語であることにちなみ、ギターを持った嘉門は「なにわの吟遊詩人」として登場した。鑑賞直前に『ちいかわ』を観ていたという嘉門は、苦難に立ち向かい、怪物が現れ、海を渡って島へ向かうという共通点の多さを挙げ、「ちいかわのめっちゃ豪華なやつ」だったと感想を語っている。さゆりはペネロペ(アン・ハサウェイ)に共感したといい、自らを「なにわのアン・ハサウェイ」と称して会場を沸かせた。
9月18日、藤村シシンの解説動画〈後編〉と「トロイの木馬」の撮影秘話
公開2週目に入った9月18日、藤村シシンによる特別解説動画の後編が公開された。前編が「まず1回観る人」に向けた入門編だったとすれば、後編は1度観た人が答え合わせをするための内容だ。
冒頭から藤村は「あまりにも上手すぎる! めちゃくちゃ新しいことをやっている」とノーランを絶賛する。本作は神話を映画にしただけでなく、原典の物語に紀元前の文明崩壊という歴史的な背景を重ねた多層構造になっているという。藤村はこれを「フィクションである『源氏物語』を描きながら、裏で『平安時代の史実』を同時に進めているようなもの」とたとえた。原典の夫婦愛を現代的に描き直した演出や、原典の有名な記述をノーランがわざわざ修正したというイースターエッグ、「もしあの時アガメムノンについて行ったら」という“ゲームオーバー説”にも話が及ぶ。
あわせて明かされたのが、屈指の名場面「トロイの木馬」の舞台裏だ。ノーランが映画『トロイ』(2004)の監督候補に挙がっていたころから温めていた構想で、本作の木馬は車輪付きの伝統的なデザインではなく、「アテナへの供物として波に打ち上げられた」ものとして描かれる。高さ約10メートルの木馬を実物で複数制作し、数千人のエキストラと本物の炎が飛び交う海岸で撮影した。ノーランは「派手な戦いで、何千人ものエキストラが参加していたし、炎などあらゆることが同時に起きていた。でもすばらしいスタッフに恵まれたよ」と振り返っている。
9月23日時点で、興行収入15億円を突破
日本での勢いはその後も続いている。IMAX先行上映を含めた国内興行収入は、公開13日目の9月23日時点で15億円を突破した(動員824,936人、興収1,561,769,520円)。シルバーウィークの週末3日間(9月18日〜20日)は全体で4位、洋画では1位となり、公開2週目のIMAX上映は動員・興収ともに前週比116%超えを記録している。
2D上映では日本語吹替版が25.1%のシェアを占め、これまでノーラン作品になじみの薄かった層にも観客が広がっている。累計25億円超えも視野に入ってきた。
















