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『バグダッド・メッシ』の少年に自分を重ねた猪狩ともか、兄の言葉

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『バグダッド・メッシ』の少年に自分を重ねた猪狩ともか、兄の言葉
画像提供:Elles Films

イラク戦争で左脚を失った少年を描く映画『バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』の公開記念トークショーが開かれ、車椅子でアイドル活動を続ける猪狩ともかが登壇。スクリーンの中の少年に自分を重ね、絶望のなかで支えになった兄のひと言を明かした。(フロントロウ編集部)

上映が終わった劇場で語られたこと

映画『バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』は、第97回アカデミー賞の国際長編映画賞にイラク代表作品として選出された一本だ。監督はサヒム・オマール・カリファ。イラク戦争下のバグダッドで、サッカー選手のメッシに憧れる少年ハムディが、爆撃に巻き込まれて左脚を失う。それでも明日を諦めない彼の姿を、荒廃した現実のただ中から描き出す。日本では8月7日に公開された。

映画『バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』ポスタービジュアル
(C) A Team Productions | Column Film | 10.80 Films | Macgyver

配給のElles Filmsが公開したオフィシャルレポートによると、その公開記念トークショーは8月9日にアップリンク吉祥寺で開催された。15時30分の回の上映後、客席の熱が残る場内にゲストとして登場したのは、事故で下半身不随になりながら、車椅子でアイドル活動を続ける猪狩ともか(仮面女子)。司会は本作を配給するElles Films代表の粉川なつみが務めた。

少年ハムディにとっての希望はサッカーだった。では、あなたにとっての希望は——。そう問いを向けられた猪狩の答えは、映画の物語と静かに響き合うものだった。

兄が言った「車椅子に乗ってても人を幸せにすることはできる」

事故後のリハビリ生活を振り返って、猪狩がまず口にしたのは家族への感謝だった。「5ヶ月半入院したのですが、家族が毎日お見舞いに来てくれました」と切り出し、実家に戻れるように家を改装してくれたこと、車をどう変えればいいのかまで調べてくれたことを挙げながら、「本当にたくさん支えてもらいました。もう言い切れないほど、全て支えてもらいました」と語った。

家族以外の支えとして挙げたのは、自身が所属するグループだ。活動が止まってしまった時にメンバーや事務所、ファンからかけられた「待ってるよ」という言葉が原動力になったと明かしている。

そして、事故から間もない絶望のただ中で刺さったのが、兄のひと言だった。

「兄に言われた『車椅子に乗ってても人を幸せにすることはできると思うよ』という言葉で、今でもずっと忘れません」

車椅子生活になると分かった時、「車椅子に乗ったアイドルは見てもらえるのかな」と考えたこともあったという猪狩。それでも、パフォーマンスする姿を見せることで元気になってくれる人がいると信じて前を向いた。夢を持つことについても、目標があるからこそ日々を頑張れる、夢を持っていたほうが人生は豊かになると思う、と自身の考えを語っている。

トークショーで語る猪狩ともか
画像提供:Elles Films

印象に残ったのは、テレビを布で背負うシーンだった

劇中で心に残った場面を尋ねられた時、猪狩が挙げたのは涙を誘う大きなドラマではなく、暮らしの中の小さな知恵だった。テレビを布のようなもので背負って運ぶシーンに、「そういう工夫の仕方があるんだ」と驚いたのだという。

「私自身も障がいを負って生活するようになってから、不便な出来事に直面すると『これをどうしようか』と考えて工夫しながら生活しているので、すごくヒントになったと言いますか、共感する部分がありました」

国も、置かれた状況も、失ったものもまるで違う。それでも「工夫して生きる」という一点で、バグダッドの少年と車椅子のアイドルは同じ地平に立っている。片足を失った主人公が父や母に当たってしまう場面も印象的だったと猪狩は振り返った。

日本では遠い出来事に感じられがちな戦争についても、猪狩は言葉を選びながら触れた。映画を通して「これが今現在起こっている国もあるんだ」と思うと、本当に平和について考えさせられる——。そして、自分を今ちょっと幸せじゃないと感じている人や、何のために生きているのか分からなくなっている人にこそ観てほしいと呼びかけた。

最後に猪狩は、「私は障がいを持って『障害者』と言われる立場ですが、それでも夢や目標を持って、仮面女子というグループで活動しています」と語り、これから悩むことがあったら今日観た『バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』を思い出してほしい、と観客に伝えてイベントは幕を閉じた。

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