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400トンの札束を地下に捨てた国があった。持ち出した人がいたとわかるまで、11年

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400トンの札束を地下に捨てた国があった。持ち出した人がいたとわかるまで、11年
(C) 2024 ROW Pictures GmbH, zischlermann filmproduktion GmbH, Lichtblick Film- und Fernsehproduktion GmbH, ZDF, ARTE

1990年の夏、旧東ドイツ政府は間もなく紙くずになる自国の紙幣を、総重量400トン分まとめて地下の坑道へ捨てた。そこから札束を運び出した者がいたと判明したのは11年後のこと。この実話を下敷きにしたヒューマン・コメディ『ハルバーシュタットの埋蔵金』が9月4日から日本公開される。主演は、いま各国の話題作に出ずっぱりのザンドラ・ヒュラーだ。(フロントロウ編集部)

捨てられたのは、明日には価値がなくなるお金だった

1989年11月にベルリンの壁が崩れ、翌1990年7月1日には東西ドイツの通貨が統一された。この日を境に、東ドイツマルクは通貨としての役目を終える。行き先を失った紙幣は、旧西ドイツとの国境に近いハルバーシュタットの地下坑道へ、秘密裏に運び込まれた。その量、400トン。

処分はそれで済んだはずだった。ところが2001年になって、坑道から大量の札束を持ち出した人物がいたことが明らかになる。誰が、どうやって、どれだけ盗んだのか——記録に残らなかったその部分を、監督のナーチャ・ブルンクホルストが想像で埋めたのが本作だと、配給のインターフィルムは説明している。

舞台は壁の崩壊から8か月後、東ドイツの田舎町ハルバーシュタット。失業中の夫婦ローベルト(マックス・リーメルト)とマーレン(ザンドラ・ヒュラー)、幼なじみのフォルカー(ロナルト・ツェアフェルト)の3人が軍の地下坑道に忍び込み、数百万マルクの札束を担いで帰ってくる。3人は近所を巻き込み、西からやって来るセールスマンから家電や食料品を山ほど買い込んでは西側で転売し、西ドイツマルクに替えていく。田舎町は思いがけない好景気に沸くのだが——。

札束を数えながら、みんなが夢の話を始める

8月20日に解禁されたのは、マーレンを切り取った2本の本編特別映像だ。配給元の資料によると、いずれも本編からの抜粋になる。

1本目は逃走シーン。盗んだ札束を袋いっぱいに詰め、男たちを従えて坑道を走るマーレンが、パトカーのサイレンに慌てながら必死の形相で出口を探す。

もう1本は、自宅のテーブルに紙幣を広げる場面。「これどうする?」「数えるわ」「何のために?」「いくらあるか知りたいの」というやり取りから始まり、話はすぐに使い道へ流れていく。キャデラックを買ってアメリカ中を旅すると言い出す者、「私が欲しいのは田舎の広いテラス付きの邸宅。部屋は9…10ね」と間取りまで決める者、仲間と共同で島を買うと宣言する者。「全部でいくら?」「数百万くらいかな」「私たち大富豪ね」といたずらっぽく笑うマーレンの顔で映像は締めくくられる。

https://youtu.be/rol01b1b4rw
映画『ハルバーシュタットの埋蔵金』場面写真
(C) 2024 ROW Pictures GmbH, zischlermann filmproduktion GmbH, Lichtblick Film- und Fernsehproduktion GmbH, ZDF, ARTE

『クリスチーネ・F』の少女が、45年後にカメラの後ろへ

この作品を撮ったナーチャ・ブルンクホルストは、監督業から入った人ではない。1981年、13歳の少女が麻薬に溺れ売春に身を投じるさまをドキュメント・タッチで描いたドイツ映画史屈指の問題作『クリスチーネ・F』で、主役に抜擢されたのが彼女だった。

その後は脚本家に転じ、自伝的な要素を入れた『ネレ&キャプテン-壁をこえて』(2001)の脚本でドイツ映画賞・脚本賞を受賞。今回、あわせて到着したコメント映像で、彼女は自らこう名乗っている。「こんにちは!ドイツより監督のナーチャ・ブルンクホルストです。40年前に『クリスチーネ・F』をご覧になった方なら私をご存知かもしれません。私はクリスチーネ役を主演しましたがそれはもう随分前のことです」。

そして新作についてはこう続けた。「ドイツ語のタイトルは『Two To One』で本当に楽しいコメディ・ドラマです。ドイツ映画は面白くないと思う方もいるかもしれませんが、この作品は違いますよ」。お金とその手に入れ方をめぐる話だから、きっと興味を持ってもらえるはずだ、というのが監督の言い分だ。

2026年のザンドラ・ヒュラーは、1年に4本走っている

主演のザンドラ・ヒュラーは1978年、旧東ドイツのズール生まれ。アカデミー賞国際長編映画賞を受けた『関心領域』に出演し、同じ年に主演女優賞候補となった『落下の解剖学』で一気に知られた俳優だ。

2026年の動きは、それに輪をかけている。2月のベルリン映画祭では『Rose(原題)』で銀熊賞(主演賞)を受賞。3月にはハリウッド製のSF大作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が世界中でヒットした。5月のカンヌ映画祭では主演作『Fatherland(原題)』が監督賞を獲り、9月に本作が日本公開。さらに10月にはトム・クルーズと共演した『DIGGER/ディガー』が控えている。

その並びのなかで、本作の役どころは異色だ。シリアスで知的な人物を任されることの多かった彼女が、ここでは生活感のあるチャーミングな女性を演じている。

共演のマックス・リーメルトは『THE WAVE ウェーブ』『マトリックス レザレクションズ』などで知られる旧東ベルリン出身の俳優。ロナルト・ツェアフェルトは『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』でドイツ映画賞・助演男優賞を受けている。

社会主義の東ドイツが資本主義の西ドイツに編入されるまでの、宙ぶらりんだった約1年。あらゆることが可能に思えたその短い期間を、本作は愛と友情と家族の話として描く。『ハルバーシュタットの埋蔵金』は9月4日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

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