マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」
2020年1月4日付、今年最初の全米シングルチャートの首位を飾ったのはなんと、言わずと知れたマライア・キャリーによるクリスマスの名曲「All I Want For Christmas Is You」。1994年にリリースされた同曲は2019年12月に、リリースから25年を経て初めて全米1位を獲得するという快挙を達成。さらにこの曲は、再びクリスマスシーズンに突入した11ヶ月後の12月19日付のチャートでも1位に返り咲き。「All I Want For Christmas Is You」が、正真正銘クリスマスに欠かせない1曲となったことが証明された。
ポスト・マローン「Circles」
音楽団体IFPI(国際レコード連盟)が発表した、2019年に最も売れたアーティストのランキングで3位にランクインしたポスト・マローンの勢いは今年も止まらなかった。10月に開催されたビルボード・ミュージック・アワードでは、トップ・アーティスト賞とトップ・メール・アーティスト賞を含む9冠を達成した。
ロディ・リッチ「The Box」
ロディ・リッチは今年、「The Box」で11週にわたって米Billboardの全米シングルチャートで首位を獲得して、最も注目を集めたニューカマーの1人となった。2021年に開催される第63回グラミー賞では、同曲が最優秀楽曲賞にノミネートされている。ロディは後に、ダベイビーとの「Rockstar」でも全米1位を獲得した。
ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」
2020年にSpotifyで最も再生された楽曲が、ザ・ウィークエンドの「Blinding Lights」だった。彼は、MTVビデオ・ミュージック・アワードやアメリカン・ミュージック・アワードで披露した傷だらけのメイクが話題になり、ノミネートが確実視されていた来年のグラミー賞でのパフォーマンスも注目されていたが、蓋を開けてみれば、グラミー賞には1部門もノミネートされず。世間に波紋が広がることとなった。
ドレイク「Toosie Slide」
TikTokでの「#トゥージー・スライド・チャレンジ(#ToosieSlideChallenge)」も話題になった「Toosie Slide」。DJキャレドとのコラボ曲「POPSTAR」のミュージックビデオにジャスティン・ビーバーが出演したことでも注目されたドレイクは、今年最も聴かれたアーティストの1人となり、Spotifyにおいては2020年に2番目に聴かれたアーティストとなった。
ザ・スコッツ(トラヴィス・スコット、キッド・カディ)「THE SCOTTS」
今年4月にトラヴィス・スコットがオンラインゲーム『フォートナイト』で開催したバーチャルライブ「アストロノミカル(Astronomical)」で初披露された「THE SCOTTS」。トラヴィスはこのライブで商業的に大成功を収めており、米Forbesは、トラヴィスがたった9分のライブで約22億円(2,000万ドル)を売りあげたと報じた。
ドージャ・キャット feat. ニッキー・ミナージュ「Say So」
来年の第63回グラミー賞で最優秀新人賞にノミネートされているドージャ・キャットの今年の活躍っぷりもさることながら、注目すべきは、リミックス版としてリリースされたこの曲にフィーチャリングで参加したニッキー・ミナージュが、なんと全米シングルチャートへの109曲目のエントリーにして、キャリア史上初めて首位を獲得したということ。また、同曲は、2人の女性ラッパーによるコラボレーション楽曲として初めて全米シングルチャート首位を獲得した楽曲にもなった。
アリアナ・グランデ & ジャスティン・ビーバー「Stuck with U」
アリアナとジャスティンという2人のポップスターによる待望の初コラボ曲は、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックが発生したことを受けて、対コロナの最前線で働く、エッセンシャルワーカーたちを支援するためにリリースされたもの。ミュージックビデオで、アリアナが恋人で不動産エージェントのダルトン・ゴメスと共演したことも話題になった。アリアナはその後、12月にダルトンと婚約したことを発表した。
メーガン・ジー・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」
メーガン・ジー・スタリオンも今年最もブレイクを果たしたアーティストの1人。地元であるテキサス州ヒューストンが生んだレジェンド、ビヨンセとコラボしたこの曲で自身初の全米シングルチャート首位を獲得したメーガンだったけれど、彼女はその後、ラッパーのトリー・レーンズとともに車に乗っていた際、銃撃を受けるという悲劇にも見舞われた。トリーはメーガンを撃ったことを否認しているものの、裁判は今も続いている。
レディー・ガガ & アリアナ・グランデ「Rain On Me」
渡辺直美とゆりやんレトリィバァが再現した日本版のミュージックビデオをレディー・ガガ本人が絶賛したことも話題になった、ガガの6作目となる最新作『Chromatica(クロマティカ)』からのシングル「Rain On Me」。同曲でコラボしたアリアナ・グランデに加え、レジェンドであるエルトン・ジョン、さらには最も勢いに乗るガールズグループの1組であるBLACKPINKらが参加した『クロマティカ』で、ガガはダンサブルなポップスターへと回帰してみせた。
ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」
今年5月、非武装だった黒人男性のジョージ・フロイドが警官に首を押さえつけられて亡くなったことが主なきっかけとなり、人種差別の撤廃を訴える「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」運動が盛んになった。そうしたなかで、様々な授賞式で「Rockstar」をパフォーマンスするたびに、「Black Lives Matter」への支持を何度も打ち出してきたのが、同曲で初めて全米1位を獲得したダベイビーだった。同曲は、来年のグラミー賞で主要部門の1つである最優秀レコード賞にノミネートされている。
シックスナイン & ニッキー・ミナージュ「TROLLZ」
2018年、所持していた銃による発砲や恐喝、ギャング関連の麻薬取引や武装強盗に関与していた容疑で逮捕され、米現地時間8月2日に刑期を満了したテカシ・シックスナイン。新型コロナウイルスの影響で、4月頭から自宅で服役して、その間にもいくつかの楽曲をリリース。そのうちの一つがニッキー・ミナージュとの「TROLLZ」だった。同曲は、ジャスティン&アリアナによる「Stuck with U」との首位争いに敗れて1位を逃した刑務所からのカムバックシングル「Gooba」のリベンジを果たし、自身に初の全米1位をもたらした。
テイラー・スウィフト「cardigan」
「cardigan」は、テイラーが7月24日にサプライズでリリースした通算8作目となるアルバム『フォークロア(Folklore)』のリードトラック。テイラーは同曲で、米BillboardのアルバムチャートBillboard200での『フォークロア』の1位と、シングルチャートHot100で「cardigan」が同時に1位に輝くという、「史上初の快挙」を達成した。
ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」
美女たちと“濃厚接触”しまくりなミュージックビデオも話題になった「Watermelon Sugar」。2020年は、ワン・ダイレクションのメンバーであるハリーが、ポップカルチャーにおける自身の立ち位置をさらに明確にした1年となっていて、ハリーは今年、男性として初めて米Vogue誌の表紙を飾ったほか、英Lystが毎年発表している、その年のファッショントレンドに最も大きな影響を与えたセレブリティを称える「パワードレッサー」リストの2020年版で、こちらも男性として初めてトップに輝いた。
カーディ・B feat. メーガン・ジー・スタリオン「WAP」
カーディ・Bが、現役大学生ラッパーであるメーガンをフィーチャリングに迎えてリリースした「WAP」。日本語で「濡れたアソコ」という意味の「Wet Ass Pussy」の頭文字を取ったタイトルが象徴しているように、「WAP」は“究極のフェミニズムアンセム”であるが故に、保守派の人たちから批判されたのみならず、男性セレブがこの曲に苦言を呈し、波紋を呼んだことも。コメディアンのラッセル・ブランドが同曲は“果たしてフェミニズムか?”についての持論を展開して批判が寄せられたほか、カーディの夫であるオフセットが、この曲に疑問を投げかけた先輩ラッパーのスヌープ・ドッグに反論するという出来事もあった。
BTS「Dynamite」
すっかり世界を代表するポップスターの1組となったBTSが、ついに韓国出身アーティストとして初めて全米シングルチャートの首位を獲得した。同曲は来年のグラミー賞で最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞にノミネートされているほか、同曲がなぜ全米1位を取れたかについてジャスティン・ビーバーが解説した動画も話題になった。
トラヴィス・スコット feat. ヤング・サグ & M.I.A.「Franchise」
4月にリリースしたキッド・カディとの「THE SCOTTS」に次いで、2020年に入ってからトラヴィスにとって2曲目の全米首位獲得となった「Franchise」。トラヴィスは今年、アルバムこそリリースしなかったものの、この楽曲のタイトルにあるような“フランチャイズ”的なサイドビジネスの数々で大成功を収めており、前述した『フォートナイト』でのバーチャルライブを筆頭に、マクドナルドとのコラボや、PS5とのコラボ、「バイレード(BYREDO)」とのコラボ香水など、多岐にわたる事業で成功を収めた。
ジョーシュ685 & ジェイソン・デルーロ feat. BTS「Savage Love (Laxed – Siren Beat)」
動画投稿アプリのTikTokが発表した、2020年にアプリで最も人気を集めた楽曲のリストで見事1位に輝いたのが、ジェイソン・デルーロとジョーシュ685による「Savage Love」だった。そして、BTSがリミックスに参加したバージョンで見事、全米シングルチャートで1位を獲得。これは、ジェイソンにとって、2009年にリリースしたデビュー曲「Whatcha Say」で首位を獲得して以来、11年ぶりの首位獲得という快挙となった。
24kGoldn feat. イアン・ディオール「Mood」
2000年生まれ、現在20歳の24kGoldnと、1歳年上の現在21歳のイアン・ディオールという若手アーティスト2人による「Mood」は、今やヒットする手段の1つとなっているTikTokでのチャレンジ動画がきっかけで火がつき、合計6週にわたって全米シングルチャートの首位を獲得した。その後、ジャスティン・ビーバーが参加したリミックスバージョンもリリースされている。
アリアナ・グランデ「positions」
5月に、ジャスティン・ビーバーとの「Stuck with U」、レディー・ガガとの「Rain On Me」で初登場1位を獲得していたアリアナが、通算6作目となる最新作『ポジションズ』のタイトルトラックでも初登場首位を獲得。これによりアリアナは、全米シングルチャート初登場1位を5曲で獲得した史上初のアーティストとなった。アメリカ大統領選の投開票日を直前に控えたタイミングでリリースされたこの曲のミュージックビデオで、アリアナが女性リーダーに扮したことも話題になった。
BTS「Life Goes On」
「Dynamite」、ジェイソン・デルーロらとの「Savage Love」で全米1位を獲得したBTSは、勢いそのままに、なんと「Life Goes On」で2020年に入ってから3曲目となる全米首位獲得を達成してみせた。全編英語で歌われた「Dynamite」とは異なり、11月20日にリリースされた最新アルバム『BE』のリードシングルである「Life Goes On」は韓国語の楽曲となっていて、BTSは母国語である韓国語でもアメリカを制することができることを証明してみせた。
テイラー・スウィフト「willow」
2020年最後のチャートとなる、12月26日付の全米シングルチャートで首位に立ったのは、今年2枚目となるアルバム『エヴァーモア』を12月11日にサプライズでリリースしたテイラー・スウィフトだった。テイラーはアルバム『エヴァーモア』と、本作からのシングル「willow」がともに初登場1位を獲得し、7月にリリースした前作『フォークロア』とそのシングル「cardigan」に続いて、「2つのチャートでの同時1位獲得を2度達成」した初のアーティストとなった。
2020年の今年、全米シングルチャートの1位に最多となる3曲を送り込んだのは、アリアナとBTSの2組。今年は新型コロナウイルスによってライブが制限されてしまったなかでも、ジャスティンやテイラー、アリアナ、ガガのほか、シングルの首位にはランクインしなかったものの、セレーナ・ゴメスやデュア・リパ、ケイティ・ペリーといったポップスターたちが新作をリリースしたり、ドージャやメーガンといった女性ラッパーが活躍したり、BTSやBLACKPINKを筆頭にK-POPが大躍進したりと、ポップミュージックはそれでも豊富な音楽と話題を提供してくれた。来年はどんな名曲が生まれるのか、楽しみにしていたい。(フロントロウ編集部)