※厳密には19曲ですが、2020年以前にも全米1位を獲得していたマライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」と、24kGoldnとイアン・ディオールによる「Mood」を除きます。
オリヴィア・ロドリゴがセンセーショナルなデビュー
「drivers license」
今年1月にリリースしたこのシンガーとしてのデビューシングルでいきなり8週連続で全米1位を獲得し、2021年に新たなスターが誕生したことをシーンに知らしめたオリヴィア・ロドリゴ。彼女の勢いは年間を通じて一切落ちることなく、9月に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードではデビューからわずか8ヶ月で今年の最多タイ受賞者となったほか、2022年の第64回グラミー賞では主要4部門を含む7部門にノミネートされている。
ドレイクがEP『スケアリー・アワーズ2』でチャート王者ぶりを発揮
「What's Next」
オリヴィアの「drivers license」による連続首位記録を8週でストップさせたのは、ドレイクの「What's Next」。この曲も収録されているEP『スケアリー・アワーズ2』の3曲の収録曲すべてで全米シングルチャートのトップ3を独占するという、さすがの人気ぶりを見せつけたドレイクは、5月に開催された今年のビルボード・ミュージック・アワードにて、過去10年間で最も活躍したアーティストに贈られるアーティスト・オブ・ザ・ディケイド賞を受賞した。
リリースは少なくても存在感は抜群だったカーディ・B
「Up」
2020年には離婚騒動もあった夫オフセットとの間に、今年9月に第2子を出産したカーディ・B。出産や子育てもあり、楽曲のリリース自体は少なかったが、フィフス・ハーモニーのノーマニのソロデビュー曲「Wild Side」に参加したり、リゾの2年ぶりとなるカムバックシングル「Rumors」に参加したりと、仲間の女性アーティストたちをサポート。「Rumors」をめぐってはリゾに体型批判が寄せられたが、カーディはこれにキッパリと反論。持ち前の姉御肌を発揮して連帯を示した。
今年は多くの楽曲をリリースしたジャスティン・ビーバー
「Peaches feat. ダニエル・シーザー & ギヴィオン」
2021年のジャスティン・ビーバーは、いつにも増して多産だった。3月にリリースした最新アルバム『ジャスティス』は、何度も楽曲を追加して再リリースされて、最終的に11月にリリースされた『ザ・コンプリート・エディション』には、なんと25曲もの楽曲が収録されている。R&Bを意識して制作した前作『チェンジズ』がグラミー賞のポップ部門にノミネートされて苦言を呈していたジャスティンだが、「Peaches」は来年のグラミー賞で最優秀R&Bパフォーマンス部門にノミネートされた。
リル・ナズ・Xが“一発屋”の汚名を返上
「Montero (Call Me by Your Name)」
今年、最もサプライズだった全米1位と言っていいかもしれない。2019年に「Old Town Road」で全米シングルチャート19週連続1位というあまりにすごい偉業を達成したために、以降、“一発屋”のレッテルを貼られてしまったリル・ナズ・Xが、自身の名前をタイトルにしたこの曲で約2年ぶりに全米1位を獲得。見事、レッテルを覆してみせ、「まだまだここにいるぜ」とツイッターで勝利宣言をした。
ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークがシルク・ソニックを結成
「Leave the Door Open」
ブルーノ・マーズというアンダーソン・パークという超一流のミュージシャン同士が手を組んでスタートさせたシルク・ソニックは、2021年に始動した最も豪華なユニットと言える。待望のファーストアルバム『アン・イヴニング・ウィズ・シルク・ソニック』は、テイラー・スウィフトの『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』に敗れて全米1位こそ獲得できなかったものの、この時にアンダーソンが発した“ブルーノと組むんじゃなかった!”というジョークは、2人がシルク・ソニックでは何よりも“楽しむこと”を第一に置いていることを象徴しているようだった。
ポロGが新たなラップスター誕生を宣言
「RAPSTAR」
「RAPSTAR」で文字通りシーンに新たな“ラップスター”の到来を告げた、米シカゴ出身の現在22歳のラッパーであるポロG。キャリアをスタートさせてからわずか3年ながら、同曲も収録された今年6月リリースのサードアルバム『ホール・オブ・フェイム』をアルバムチャートの首位にも送り込んだ。アルバムにはニッキー・ミナージュやリル・ウェインらが客演で参加するなど、大御所たちからもその才能を認められており、お互いの楽曲に参加し合っているザ・キッド・ラロイと並んで将来を期待されているラッパーの1人。
ザ・ウィークエンドのロングヒットは2021年まで続いた
「Save Your Tears (Remix) with アリアナ・グランデ」
「Blinding Lights」が2020年に世界で最も売れたシングルとなり、今年3月に開催された第63回グラミー賞で1部門もノミネートされなかったことが物議を醸したほど、“ザ・ウィークエンドの年”だった2020年。昨年3月にリリースされた現時点での最新アルバム『アフター・アワーズ』は2021年もロングヒットを記録することとなり、アリアナ・グランデを迎えたこのリミックスで見事全米1位を獲得した。2月に出演したスーパーボウルのハーフタイムショーをもって『アフター・アワーズ』のフェーズを締め括ったザ・ウィークエンドは、8月にリリースした新曲「Take My Breath」で新たなフェーズに突入。2022年にはその全貌が明らかになることが期待される。
オリヴィア・ロドリゴがポップパンクの復活を宣言
「good 4 u」
ポップパンクな「good 4 u」で早くも自身2曲目の全米1位を獲得したオリヴィア。自身も憧れを公言するアヴリル・ラヴィーンからは、「デビューアルバムをもってチャートにロックンロールを大々的に帰還させた」とこの上ない称賛の言葉を贈られた。今年はポップパンクが本格的にリバイラルした年となっていて、アヴリル本人も11月にポップパンクな新曲「Bite Me」をリリースしたほか、アヴリルとのコラボも実現したウィローのアルバム『lately I feel EVERYTHING(レイトリー・アイ・フィール・エヴリシング)』もポップパンクにインスピレーションを得たものになっている。
2021年、最も長期にわたって全米1位を獲得したのはBTS
「Butter」
2020年に「Dynamite」と「Savage Love」、「Life Goes On」の3曲を全米1位に送り込んだBTS。2021年に入ってその勢いは落ちるどころか、さらに上昇を続けた。クイーンやマイケル・ジャクソンの甥であるタージ・ジャクソンのお墨付きも得てリリースされた「Butter」は、なんと通算で9週にわたって全米シングルチャートの1位にランクイン。2021年に最も長期にわたって全米1位に君臨した楽曲となった。
「Butter」から全米1位を取って替わったのもBTS
「Permission to Dance」
「Butter」が7週連続で全米1位を獲得した後で、一旦「Butter」に取って替わって1位にランクインすることになったのは、これまたBTSの「Permission to Dance」。BTSはこの曲で1位を獲得した後で、再び「Butter」で2週連続となる1位を獲得し、10週連続で1位をキープしてみせた。ちなみに、この「Permission to Dance」を手掛けたのはエド・シーランで、エドにとっては全米1位を獲得した通算4曲目の楽曲となった。
ザ・キッド・ラロイとジャスティン・ビーバーがTikTokを席巻
「Stay」
来年のグラミー賞で最優秀新人賞にノミネートされるなど、2021年に最も飛躍した新人の1人となったザ・キッド・ラロイにとって、初の全米1位シングルとなった「Stay」。ラロイの才能にすっかり惚れ込んだジャスティンのサポートも大きかったが、この楽曲が多くの人の目に留まるきっかけとなったのは、TikTokが発表した2021年の「Year On TikTok」リストで1位に選ばれた、この曲を使った“お尻ふりふりダンス”動画。最終的に「Stay」は日本を含む世界中の多くのTikTok動画に使われることとなり、米BillboardのGlobal200チャートではなんと通算11週にわたって首位を獲得した。
アストロワールドでの悲劇も経験したドレイク
「Way 2 Sexy feat. フューチャー & ヤング・サグ」
3月にリリースしたEP『スケアリー・アワーズ2』の収録曲3曲で全米トップ3を独占したドレイクは、9月にリリースした約3年ぶりの最新アルバム『Certified Lover Boy(サーティファイド・ラヴァー・ボーイ)』でも、全米トップ10に収録曲9曲を送り込むという快挙を達成。その時に1位を獲得したのが「Way 2 Sexy」だった。一方、今年のドレイクを振り返る上で避けて通れないのが、11月にサプライズで出演したトラヴィス・スコット主催フェス「アストロワールド」でパフォーマンス中、ステージ前方に観客が殺到して10人が亡くなる悲劇が起きたこと。ドレイクにもこの悲劇の責任があるとして、トラヴィスらと並んで多くの訴訟を起こされている。
コールドプレイは地球に優しいツアーを発表
「My Universe with BTS」
コールドプレイに2008年の「Viva La Vida」以来、およそ12年ぶりとなる全米シングルチャートの1位をもたらしたのはBTSとの「My Universe」だった。2016年〜2017年に行なった『ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ』ツアーを最後に、環境に優しい方法を見つけるまではツアーをしないと語っていたコールドプレイは、「My Universe」も収録されている最新アルバム『ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ』を引っ下げたワールドツアーを2022年に行なうことを発表。彼らはこのツアーを“地球に優しい”ものにするために様々な施策を行なうとしており、ライブ産業にも気候変動への対策が求められているなかで大きな注目を集めている。
黒人ゲイ男性としてヒップヒップに革命を起こしたリル・ナズ・X
「INDUSTRY BABY feat. ジャック・ハーロウ」
かつて“一発屋”のレッテルを貼られていたことが嘘かのように、リル・ナズは2021年に快進撃を見せ、2曲のシングルを全米1位に送り込んだ。しかもこの「INDUSTRY BABY」は、裸のセクシーな男性たちを引き連れ、刑務所にいるゲイ男性たちを描いたミュージックビデオ付き。今年はダベイビーの問題発言が象徴的だったが、クィアの人々を排除してきた側面があるヒップホップのシーンにおいて、ゲイの黒人男性として大成功するという革命を起こしたリル・ナズは、LGBTQ+の若者たちの自殺防止に取り組んでいる慈善団体ザ・トレヴァー・プロジェクト(The Trevor Project)から、その功績を称えられて表彰もされた。
アデルが帰ってきた
「Easy On Me」
アデルがシーンに帰ってきたことは、2021年の音楽シーンにおける最も重要なトピックの1つ。誰もがSNSを駆使して、実質365日にわたってセルフプロモーションを行なっているこの時代に、彼女はSNSなどでw全くと言っていいほどプライベートを晒さず、露出は音楽のプロモーションが必要な時だけ。元夫サイモン・コネッキとの離婚について歌った「Easy On Me」はアデルにとっておよそ6年ぶりの新曲となったが、リリース初週から4週連続で全米1位を獲得した。自分のインスタグラムのアカウントのパスワードすら知らないというアデルだが、SNSで頻繁にファンにコンテンツを提供しなくても、曲が素晴らしければみんな自然と聴くということを彼女は証明した。
テイラー・スウィフトが歴代最長の楽曲で全米1位
「All Too Well (10 Minute Version) (Taylor's Version)」
9年前に既にリリースした楽曲を、タップ1つですぐにスキップできるこのストリーミング全盛期にボリュームたっぷりの10分バージョンとして再リリースし、それを全米1位に送り込めるアーティストなど、テイラー・スウィフトの他にいるだろうか? テイラーはイースターエッグを詰め込んだショートフィルムと共にリリースした10分13秒に及ぶ「All Too Well (10 Minute Version)」で、“全米1位を獲得した歴代最長の楽曲”の記録を打ち立てた。この事実だけでも、テイラーが今もトップクラスのポップスターであることを証明するには十分だが、オリヴィア・ロドリゴを筆頭に、今年は彼女に影響を受けた次世代の“テイラー・チルドレン”たちの活躍も目立った。
2021年の今年、全米シングルチャートの首位に最も多くの楽曲を送り込んだのは、「Butter」と「Permission to Dance」、コールドプレイとの「My Universe」の3曲で首位を獲得したBTS。彼らはコラボしたエド・シーランやコールドプレイに久しぶりの全米1位をもたらすなど、世界の音楽シーンを先頭から引っ張るグループの1組となった。
シングルで全米1位獲得とはならなかったが、2021年はビリー・アイリッシュやホールジー、ドージャ・キャット、ロードといったポップスターたちも新作をリリース。トム・パーカーの末期の脳腫瘍との闘病を乗り越え、ザ・ウォンテッドが再結成を果たすという嬉しいニュースがあった一方で、リトル・ミックスが活動休止を発表するという悲しいニュースもあった。そして今年は、去年は開催できなかったスーパーソニックの開催が実現するという、希望が持てる出来事も。来年こそは、さらに多くの海外アーティストたちのライブをここ日本で観たい。(フロントロウ編集部)